知らないから

アレクシエーヴィチさんの『ボタン穴から見た戦争』(三浦みどり訳、群像社、2000年、原著は1985年発表)です。
ベラルーシの子どもたちが、1941年からの戦争をどう記憶しているかを著者独特のインタビューでつづったものです。
ベラルーシは、ポーランドに接していますから、最初にドイツ軍がはいってきた地域ですし、戦線が何度もいったりきたりしたところでもあります。ソ連史をていねいに見れば、1939年の9月にはポーランド東部にソ連軍は侵攻しているわけですし、そのあともフィンランドとの戦争はあったのですから、まったくの平時ではなかったのでしょうが、子どもをめぐる日常生活のレベルでは、穏やかなものがあったようです。証言のなかにも、6月22日の日曜日には、ピオニールのキャンプにいっていたり、サーカスを見に行ったり、射撃の選手権が行われる予定だったりと、ふだんの生活が営まれていたようです。
そこに、戦争という異物がはいりこんでくるのですから、これは重要な証言であるのでしょう。戦争体験を考えるうえで、だれが、どこまで知っていたかということは、けっこう重要なことです。

ところで、岩波書店の『図書』にはその月の刊行物の広告と、翌月の刊行予定のリストが掲載されています。それをみると、2016年2月の岩波現代文庫の予定リストに、この本と、『戦争は女の顔をしていない』が含まれています。『チェルノブイリ祈り』とあわせて、3点が岩波からの刊行ということになるようです。