虚を実に

辻田真佐憲さんの『たのしいプロパガンダ』(イースト新書Q)です。
20世紀の歴史を振り返って、権力による宣伝がどのようになされていったのかを、いろいろな国の例をあげています。新書という立場ですから、わかりやすいものが選ばれていて、現在の北朝鮮や中国の話もでてきます。
ずっと昔から、〈三人市虎をなす〉という話もあるように、意図的に虚実のあやふやな情報を流すことで、ひとびとの思考を特定の方向に向けようというのは、あることですから、現在の政権与党が、作家を呼んで話を聞いて、宣伝のために文化を利用しようというのは、当然警戒しなければならないことでしょう。その点から、過去はとらえなおさなければなりません。また、創造にかかわる側も、みずからの行いを律する必要があるでしょう。責任転嫁はできないのです。