たたきこむ

大江志乃夫『国民教育と軍隊』(新日本出版社、1974年)です。
明治期の学校教育と社会教育に関して、いかに軍が関与し、兵隊になることを所与のものとして社会全体に受け入れさせるのかを考えていたか、ということを、原典の史料にさかのぼって追求した論考です。引用されている史料が多く、当時の軍関係者の論考や証言などですので、読みにくいところもあるのですが、当時の教育が、それこそ軍事優先のものだったことがわかります。
近代日本が、上からの近代化を進める中での軍隊ですから、どうしても強制でいうことをきかせるという面が必要になります。そのために、小学校レベルから教化しようとして、師範学校の生活を軍隊的にするところから手をつけていくのです。
そのようにして養成された教員は、児童に教えるだけでなく、徴兵検査前の社会人教育にも先頭になって、国家への奉公を言い立てていきます。そうした、社会全体をくるみこむシステム、今はどうなのかということも、考えさせます。