地方のこころ

大地進さんの『黎明の群像』(秋田魁新報社、2002年)です。
著者は「秋田魁新報」の記者で、新聞に連載したものをまとめたものです。
1920年代はじめに、秋田出身の小牧近江、金子洋文、今野賢三らを中心にして発行された雑誌『種蒔く人』の姿と、この3人の生涯を追ったものです。
こうして、地方紙が、その地域の先人を顕彰する記事をつくり、それを小冊子ではあっても、形としてまとめていくということは、特に、東京一極集中の時代には、意味のあることでしょう。かれらの育った秋田土崎は、港町でした。日本海側の港町といえば、江戸時代からの伝統をもつところも多いのですし、北海道の小樽を考えても、文化的にも先進的なものがはいってきたところでもあるでしょう。明治から昭和はじめにかけての、港町のはたした役割は、もっと注目されてもいいのではないかとも思います。考えてみれば、『坊っちゃん』の主人公は、瀬戸内海を走る船であの町に赴任し、港から鉄道で城下に向かっています。汽車を乗り継いでいったわけではないのですから。