はぐらかし

小林信彦さんの『世界でいちばん熱い島』(新潮社、1991年)です。
このころの小林さんの作品は、『世間知らず』や『イエスタデイ・ワンス・モア』や、『イーストサイド・ワルツ』など、けっこうリアルタイムで読んでいるのですが、なぜかこの作品だけ、25年ほどはずしていました。特に理由も思い当たらないのですが、主人公が1946年生まれという、けっこう微妙な年齢に設定されている(作中の現在は1989年から90年にかけて)のも、一因だったかもしれません。現在に対しての居心地の悪さというのは、小林作品のけっこう大きなファクターなのですが、それがうまくつながらなかったのかもしれません。
主人公の野口が、ホテルの支配人として生きるやりかたも、宮仕えの身では当然なのですが(作者が初版本のはさみこみ対談でいう通り、ストーリーの詳細は明かせないのですけれど)、これもどうなのかなとも違和感をおぼえます。
その意味では、ちょっと異色の作品だと思った方がいいのでしょうか。