大義名分

日本思想大系『頼山陽』(岩波書店、1977年)です。
山陽が死の直前まで推敲を重ねた「日本政記」を全文書き下し文にして収録してあります。これは、「日本外史」が、武家のたたかいを物語風に描いたのに対して、神武天皇から豊臣秀吉の死までを編年体にまとめ、そこに論賛を加えたものです。
山陽自身は、幕藩体制を批判するわけではありませんが、名分論は重視したようで、南北朝のいずれを正とするかに関しては、もともと後嵯峨帝が大覚寺統側に肩入れしたことをもとにして、持明院統は北条氏が擁立したものだし、光明天皇も足利氏の傀儡であったということから、明確な南朝正統論にたちます。三種の神器の有無が問題なのではなく、流れとしての正統という立場のようです。
そういうことも、山陽の死後、〈志士〉たちが彼の著作を利用する一端になったのかもしれません。今回の大河ドラマでも、松下村塾に学ぼうとした人が、「日本政記」を手にしているという場面がありましたから。