外から

大城立裕さんの『朝、上海に立ちつくす』(中公文庫、1988年、親本は1983年)です。
大城さんは、上海にあった東亜同文書院大学に進学し、予科生のときに入営し、終戦を迎えます。そのときの経験をもとに書いた小説で、作中の主人公、知名も、1943年に予科に入学し、二年目の春を迎えたときから作品ははじまります。
東亜同文書院は上海にあった旧制の大学あつかいの学校でした。外地での日本人向けの学校という複雑なところがもともとあり、さらにその〈日本人〉のなかには、朝鮮や台湾出身の学生もいるのですから、それは何なのかとも考えてしまいます。そうした学校が、当たり前のように存在していたことじたいが、変だったのでしょう。どうしてそんな状態がうまれたのかは、小説の書くことではないのかもしれませんが、そういう視点をもっていないと、単なるむかしばなしになってしまいます。そこに、作者は挑戦しました。