違いの認識

埴谷雄高『欧州紀行』(中公新書、1972年)です。
辻邦生とのヨーロッパ旅行記で、いろいろな雑誌などに発表したものを新書にまとめるという、少し珍しい形式のものです。
そのなかで、ロンドンやミュンヘンで経験した、格差の問題があります。著者が酒場に入るのですが、そこで、『ここはおまえのいる場所ではない』ということを、あるときは暗黙の了解のように、またあるときはあからさまに口に出して言われるような経験をするのです。それは、ヨーロッパの社会にある、厳とした区別の存在を知らしめるものなのです。
ヨーロッパの労働組合が、職能別になっていて、企業別ではないとよくいわれますが、それはこうした、区別があってこそのことなのだと、著者の経験からみえてきます。
こうしたちがいは、よくわきまえておかなくてはいけないのでしょう。