長生き

伊藤信吉『高村光太郎』(角川文庫、1964年)です。
高村光太郎は、戦後もしばらく活動していたので、戦争責任追及となると、必ずと言っていいほどひきあいに出される人です。もちろんそれは、彼が岩手に戦後の一時期隠棲生活を送っていたことが関係するでしょう。
この本では、そこにいたる高村の生き方を、時系列に沿って追っていきます。プロレタリア文学が盛んだったころにどうしたのか、戦時中の高揚した気分はどこから出たのか。そういうことを考えさせます。
著者自身も、戦時中のいろいろな踏みはずしはあっても、長い目で見れば社会進歩を信じる側にいたということもできるでしょう。その点では、長く生きていれば、立ち直る機会は必ず存在するということにもなるのでしょう。