交錯

山崎一穎さんの『森鴎外 国家と作家の狭間で』(新日本出版社、2012年)と、加藤悌三さんの『石川啄木論』(新樹社、1986年)です。
作家と宮仕えとを両立させた鴎外と、生活者としてはどうかと思う啄木とは、ある意味対照的な存在なのかもしれません。にもかかわらず、鴎外も漱石も、啄木に注目していたわけで、周囲のひとたちから応援されていたというのも、不思議なものです。正直、啄木論も、前半の生涯を描いた部分は、読みづらいものでした。もしも啄木が長生きしていたら、若い時代の彷徨も、笑って話せるできごとになったのかもしれません。鴎外の、勤め人としてのいろいろな困難を乗り越えようとした生き方は、やはり学ぶべき点はあるでしょう。そこは大切なところです。