断章

『新解マルクスの言葉』ですが、けっこうおもしろく読めました。浅尾さんが小説家だったことが、こういうときには幸いしたのでしょう。評論家ならば、どうしても引用した文章が、マルクス全体の中で、どのような位置にあるのかを語らずにはいられなくなるのだと思います。一気に、現代にひきつけるところに、この本のおもしろさも生まれているのでしょう。
また、引かれた言葉自身からも、マルクスの変化がわかります。前後に引かれたことばと、どうも呼吸が違うなと感じたことばがあり、よくよくみると、前後は『資本論』なのに、そこだけ『賃労働と資本』からのことばだというところがありました。もちろん、この本の読み手として想定される人は、『賃労働と資本』が、マルクスの思想の発展の中でどういう場所にあるのかを知らない人のほうが多いと思います。けれども、文章をていねいに読みこめば、違いはわかるでしょうし、マルクスの本領がどこにあるのかも見えてくるのではないでしょうか。

ただ、やはり索引はほしかったですね。