方向

玄侑宗久さんの『光の山』(新潮社)です。
ここに収められた作品には、「あぶないといわれているフクシマのどこかよりも放射線量の高い地域は西日本にもある」という玄侑さんの日頃の主張が反映しています。
CTスキャンを一回浴びたときの放射線量が高いのはもちろんそのとおりですし、そういう中で生きることを選んだがゆえに家庭が崩壊するというこの本のなかの短編も、正しい情報をどのように生かすかという問題とかかわりあっています。
ただ、これから先のことを考えるとき、いまの放射線量の問題だけですべてがすむわけではありません。これ以上の不安をもたらさないためにも、汚染水の問題も含めて、長期的な展望をもたなければなりません。そのとき、玄侑さんの観点は、大切なものになるはずです。