交代

酒井忠康さんの『時の橋』(小沢コレクション、1987年、親本は1978年)です。
維新期に活躍した浮世絵作者、小林清親についての文章を集めたものです。幕府から薩長政府への変換期に、東京や横浜のひとびとはどのように対応していったのかが、清親の絵からにじみ出ているというのです。
文明開化といっても、庶民の生活がすぐに変革をとげるわけではありません。新しい文物が、人びとの生活になじむまでには時間がかかります。極端な話、洋服が日常的になったのは昭和、へたをすると戦後になってからでしょう。そうした時代のなかでうまれるものや消えてゆくものを、画家の眼はとらえていたということでしょうか。
維新をおこしたのは薩長であって、江戸の庶民ではなかったのですし、明治の文化をつくったのは江戸のひとびとで薩長ではなかった(紅葉・露伴漱石とならべてみましょうか)というのも、考えなければならないことでしょう。