距離感

島崎藤村『旧主人・藁草履』(新潮文庫、1952年、親本は1907年)です。
藤村の初期作品で、小諸にいたころの経験を主にした作品集だということです。世紀の変わり目のころの、長野県の農村の光景ではあるでしょう。
けれども、やはり、そこに、作者の目が現実に対して距離をおいているようにみえます。対象とされた現実に対して、浸りきっていないようにみえるのです。なにやら、『珍しいものを見た』と作者が感じているようなのです。
これらの作品が、あまり語られないのも、そのせいかもしれません。