けた違い

池内紀さんの東プロシア紀行『消えた国 追われた人々』(みすず書房)です。
プロシアというのは、もともとはプロシアの中心だったはずの場所なのですが、ドイツ統一のためにプロシアがベルリンを中心として統一国家をつくったために、辺境となってしまったところです。さらに、ベルサイユ条約の結果、飛び地になってしまい、今はポーランドリトアニア、その間にロシアの飛び地という現状になっています。
ギュンター・グラスは、そのエリアに近接した西プロシアのダンツィヒグダニスク)の出身だったということから、池内さんはこの地域を訪れてみようと考えたようです。グダニスクのみならず、この界隈は、歴史的なものもたくさんあって、それがために、ドイツとロシアという二つの大国の間で翻弄されることにもつながったのでしょう。
その結果、第二次大戦のあと、そこに住んでいたドイツ系の人たちは、その地を離れざるを得なくなります。その『引き揚げ』の結果が現在の国境線になっているわけで、その複雑さも、池内さんは考えます。
その点では、〈満洲〉からの引き揚げとは比較にならないということでしょう。そうした、ドイツというもののありようは、もっと考えなければいけないのでしょう。