土台のうえに

成田龍一さんの『近現代日本史と歴史学』(中公新書、2012年)です。
もともとは歴史の教員を目指す学生への歴史学史の講義というところから出発したもののようなので、とりあげられている著作も、けっこう入手しやすい新書なども含まれています。
戦後歴史学というと、最近はすっかり悪者のように扱われていますが、社会経済史・民衆史・社会史という著者のその時代ごとの観点を整理するやりかたは、学問が決して過去の全否定ではなく、成果の上にたって、それを補強していくものだということがわかります。
もちろん、「大正デモクラシー」に関する評価が、時代によって変わってゆくというようなことはありますが、(石橋湛山など、むかしは話題にならなかったでしょう)それだけの蓄積を、歴史学はもっているのでしょう。そこは、しっかりと認めていかなくてはいけません。