手仕事

『米欧回覧実記』の2冊目(岩波文庫、1978年)です。
使節団のイギリス滞在の部分なのですが、当時の産業革命をリードした大英帝国のことですから、使節団は各地の工場を見学します。製鉄所、ガラス工場、陶磁器の製作所、さらにはビスケット工場と、さまざまな業種を見学し、工程を記録します。技術上のことは専門的になるのでよくわかりませんが、規格品の大量生産という、資本主義社会の実態をみるのです。
そこで比較される日本の現状は、いわゆる職人芸の世界になります。精緻な細工はできるが、大量生産にはむいていない日本のシステムと、イギリスのシステムとを比較して、日本の生きる道を探るのが、使節団の仕事でもあったのでしょう。〈ガラパゴス化〉というのは、今も昔も日本人の性質のなかにあるわけで、そこをきちんと位置づけなければなりません。