表と裏

井上ひさし『一分ノ一』(講談社、2011年)です。
1986年から1992年にかけて連載されたが未完に終わった作品です。
日本が敗戦後4か国に分断して占領されて40年経ったという設定で、そのなかで日本をもとの統一された国家にもどそうと考える主人公の活躍を描いています。
北海道と東北はソ連、四国は中国、西日本はイギリス、中央日本はアメリカの占領下におかれ、東京は各国の共同管理で、六本木の5叉路交差点が、各国の境界だというのです。もちろん、つっこみどころはいろいろとあるでしょうし、ソ連崩壊が連載中におこったことも、作品中絶の一因ではあったでしょう。
ただ、そこを通して、作者の理想が描かれていることも大切です、理想の国家とはなにかという、問いかけは、作品世界の〈現実〉にしっかりと向き合っています。そこが、読むに足る理由のひとつなのでしょう。