道のり

風見梢太郎さんの『海蝕台地』(ケイ・アイ・メディア)です。
10年くらい前に『女性のひろば』誌に連載された作品ですが、今回本になりました。ある大きな通信会社の研究所で、思想差別を受けながらも屈しないで研究をつづける主人公が登場します。その中には、一度はたたかいに加わりながらも、会社の攻撃によって脱落してゆくもの、差別のあとに入社してきて差別には直接加担しなくても、上司の命令に従うことで、主人公を苦しい立場に追い込んでしまうもの、など、さまざまな人たちがあらわれます。作者は、そのひとりひとりをきちんとみつめ、その人の負っている苦しさに寄り添おうとしています。企業の中にある陰湿な部分をどのように描いてゆくのか、そこへの挑戦といってよいでしょう。