ことばの壁

センベーヌ『帝国の最後の男』(片岡幸彦訳、新評論、1988年、原著は1981年)です。
著者はセネガルの人で、この作品もセネガルで大統領が失踪した後の政治の混乱を描いた小説です。あくまでもフィクションで、実際の政治過程とは無関係ですが、地名などは実在のものを使ったようです。
著者は早い時期から、サハラ以南のアフリカを代表する作家として、日本語訳もいくつか出た(ただし、訳者の藤井一行さんの履歴からかんがみて、ロシア語訳からの重訳だったようです)のですが、著者は、フランス語で執筆しつづけても、セネガルの多くの人には作品は読まれないと感じて、映画の世界に軸足を動かします。日本でも、30年くらい前に、『エミタイ』という作品が岩波ホールだかで公開されたと記憶しています。
ラテンアメリカの作家は、まだみずからの言語で書くことができるのでしょうが、アフリカの作家のおっているものの大きさが、日本への紹介もあまり多くはないことにもつながるのでしょうか。