抑えこむ

万城目学さんの『鹿男あをによし』(幻冬舎文庫、2010年、親本は2007年)です。
奈良の学校に赴任した青年教師が、鹿からナマズをおさえこむ儀式のために、『サンカク』と呼ばれる『目』をキツネから受け取る役目に任ぜられるところから起こる騒動を描いた娯楽小説です。主人公が『知識なさすぎ』なのですが、それが逆に読者への謎ともなっているのでしょう。
ただ、鹿島の要石で頭を抑えられているナマズの尾が平城宮のあたりにあって、そこで尾を抑えこむ儀式をやる、そのために奈良には鹿が鹿島から渡ってきたのだという、この物語の構造は、現実に地震鹿島神宮が被害にあった後に読むのには、若干の抵抗がなかったとはいえません。作品では富士山の噴火を抑えるという設定なのですが。