引き入れると

イザベラ・アジェンデ『精霊たちの家』(木村栄一訳、河出の世界文学全集、2009年、原著1982年、親本1989年)です。
チリを舞台に、一家の歴史を語ることで、20世紀のチリの歴史を物語ります。具体的に描かれるということでも必ずしもないのですが、1970年の人民連合政府から73年の軍部によるクーデターまでの流れが、小説作品として描き出されています。
保守系の人たちが、どのようにサボタージュして新政権を麻痺させていこうとしたか、軍部を抱き込むことで政権を奪還しようとして、かえって軍事政権をうみだしてみずからの保守の基盤もおかしくなってしまったこと、など、当時の状況がなまなましくうかびあがります。
ふと、足立区の吉田万三区長が、議会による反抗によって区長の座を追われたことも思い出してしまいましたが、権力を持っている側は、単純には引かないのでしょう。そのためには、悪魔とでも手を結ぶこともありえます。かつてドイツの支配層が、ヒトラーを政権につけたようなことが、今後起こらないという保障はありません。