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中野重治書簡集』(松下裕・竹内栄美子編、平凡社)が出ました。
筑摩の全集には、未公表の手紙は収められないという方針でしたので、こうしたものが出るのはいいことだと思います。
けれども、そういう状況下で出すのなら、全集に準じたものとして、もう少し配慮はあってもよかったのではないかとも思うのです。
中野没後、1980年に全集が完結した後、妻の原泉は1980年9月に、知友にあてて手紙類の拝借をお願いする手紙を各方面に出しています。それに応じて集まった約1000通のうち、765通がここに収録されました。
もうこうしたものが出版される機会もまずないでしょうから、非収録となった手紙の、日付と宛先くらいはリストにしてほしかったと思います。その中でも、すでに『愛しき者へ』に収録されたものとか、石堂清倫の本に収められたものとかもあるでしょう。
それも含めてリストにすることで、後世への伝承にもなったのではないかと思います。文庫本なら別に気にしないのですが。それで若干定価があがっても、かりに15000円が16000円になっても大勢に影響はないでしょう。買う人は買いますよ。

部外者のたわごとと言われるのは承知の上です。