根底

相沢一郎さんの『父の微笑』(本の泉社)です。
地方税を徴収する仕事が、どのように行われているのか、関西地方(神戸近辺ですね)を舞台にして描かれます。税収確保のためのノルマ達成が求められ、それは零細業者から絞りとるようなかたちで行われます。
そうした行政のありようは、阪神淡路の震災のあとの復興にもあらわれます。震災からの復興として後藤新平がよく引き合いに出されますが、それが単なる図上の開発計画を、どさくさまぎれにやってしまおうという意識に過ぎないのだということが、震災後の対応にあらわれるのです。
むりやりとりたてる地方税が、生活実態にそぐわない復興事業に使われる、そうした構造は決して過去の、一地方の特殊なケースではないのではないか、そんなふうにも考えてしまうのです。