あらためて

『図書』4月号には、若尾政希さんの「天変地異の思想」という文章が載っています。以前、ここでも関東大震災のときの〈天譴論〉が、罰せられるべきは為政者なのに、無辜の人民大衆に罰がくだると説明しているのはおかしい、と指摘したことがありますが、それを直接渋沢栄一の文章を引いて論証しています。「上御一人に置かせられては、万世一系の皇統を践ませられてをられる」から責任はないのだと渋沢は言っているというのです。
それで、ひとびとの意識の中に、自己責任論が当時もはやったというのです。ある意味では、みな天のもとでは平等であるという意識の反映かもしれないのですが、それが利用されてしまったともいいます。
考えるべきことのある文章でした。