ダブル受賞

芥川賞は、朝吹と西村のおふたかたに決まったようです。
朝吹作品は、たしかよしもとばななの「どんぐり姉妹」と同じ月に出たので、やや損をしたような感じなのですが、湘南の風光を背景にしたある種の〈品のよさ〉がにじみ出る作品だという印象が残っています。作者の〈育ち〉をほうふつさせるという感じでしょうか。
西村作品は、しんぶんの時評で触れましたが、〈自分〉をきちんと書くと、そこには時代が刻印されるという感じでしょう。上ろうとすれば上れる可能性がありながら、そこをドロップアウトする主人公の造形に、日本の私小説は賭けてきました。その〈伝統〉の厚みが、西村作品の底に流れています。
今回の候補作の中では、この二つは抜けていましたから、どちらかにはなるだろうと思っていたのですが、ダブルという結果には、少し驚きました。それぞれの選考委員の方たちはどう判断したのでしょうか。

追記)「きことわ」は、「どんぐり姉妹」の次の号でした。連続していたので、同じ号だと思い込んでいたようです。