下準備

大日方純夫さんの『警察の社会史』(岩波新書、1993年)です。
おもに明治大正期の行政警察のありようを調べたものですが、社会生活のざまざまな局面に警察が関与していたことがわかります。そういえば、大相撲で現在はなくなりましたが、昔は親方がいなくなったとき、現役力士が後継者となって部屋を継ぐということが認められていた、それを〈二枚鑑札〉と呼んでいるのですが、その由来は、現役力士(プレーヤー)と親方(プロデューサー)とが、それぞれ警察に届け、登録されなければならなかったことからきているということを思い出しました。
さて、関東大震災の後、〈自警団〉なるものが組織され、いろいろと問題を起こしたことは有名ですが(たしか芥川龍之介のエッセイにも、そうしたものがあったように記憶しています。『或阿呆の一生』だったかな)、実は、震災以前から、警察は地域のなかに自警団を組織するように指導していたというらしいのです。この本には戸塚(いまの横浜市戸塚区のあたり)の事例が紹介されているのですが、そうした下地があって、震災のときに〈暴走〉したということらしいのです。そうなると、単純に〈群集心理〉というだけではなさそうですね。
日常のなかに、そうした〈意図〉を秘めたものがあるかもしれないとは、気にしなければならないのかもしれません。