はじまりをさぐる

勅使河原彰さんの『歴史教科書は古代をどう描いてきたか』(新日本出版社、2005年)です。
最近の小学校の学習指導要領では、日本の歴史は弥生時代からはじめることになっているようで、米づくりと「大和朝廷」から始まるのだそうです。縄文時代は〈発展学習〉という位置づけで、教える必要は必ずしもないものとされているのだそうです。
そうした発想が、戦前の教科書の思想と似ていることを、当時の教科書の記述をベースにして通史的に書いています。古事記日本書紀にある、否定的な記述を消し去って、都合のいいことばかりを教科書に書いていく。その中で、いろいろな記事を折衷して「新しい史実」をつくっていく、そうした状況にあったことがみえてきます。
その中で、考古学的なことを、国史の教科書ではなく、国語の教科書のなかにすべりこませるなどのくふうもあったということとか、外山正一が貴族院で教科書の国定化に反対したとか、いろいろな動きがあったことも知ることができます。
前にここで書いたことがありますが、〈九州王朝説〉のようなトンデモが横行するには、古代史や考古学の最新の成果が、本当に人びとのものになりきっていないことがあるのだと思います。(けっこう現代史に関しては鋭い観点を持っている人で、九州王朝を本気で信じている人がいるようなのは、考えるべきことなのかもしれませんが)旧石器捏造ということもあったわけで、そうした中での、歴史に対する認識をどのように共有していくのかは、もっと考えなければいけないのでしょう。(念のためいっておきますが、1985年あたりまでの古田武彦さんの本は、ひととおり読んでいます)