天の半分

井波律子さんの『破壊の女神』(知恵の森文庫、親本は1996年)です。
井波さんは、最近の中国文学研究者のなかで、一般受けするテーマを、わかりやすく書くことが得意なかただと感じています。この本の中でも、実在の女性と、物語の中の女性とを半々ぐらいにして、中国史における女性の姿に迫ろうとしています。スーパーヒロインとでもいうべき、活劇を演じる女性たちと、『金瓶梅』や『紅楼夢』に出てくるような、リアルな女性像とを両極端にして、その中にいたのが実際のすがただったのでしょうか。
旧中国の話に限定しているので、最近の、それこそタイトルどおりの「破壊」の第一人者の江青が出てこないのがいささか残念なところです。当時の文革派の中心に、日本語でよむと同じ「康生」という男がいたので、当時の北京放送では江青を「jiang qing」(声調符号は略させてください)と、発音していたのも覚えています。
でも、なかなか現在では、過去の人たちに匹敵するような女性は、現実の世界でも、文学の世界でも、なかなか見えてこないようなかんじはありますね。それだけ中国社会も、世界の中で均質化しているのでしょうか。