植民地を書く

センベーヌ・ウスマンさん、死去。
センベーヌ(これがファミリーネームだそうです)さんは、セネガルの出身で、最初はフランス語で書く小説家として世界に知られました。早くも1963年には、新日本出版社から『セネガルの息子』という作品(原題はもっと複雑なのですが)が出版されています。しかし、彼はこんなことを感じたのだそうです。(趣旨ですが)
〈私の母は、本が出たことを喜んでくれた。しかし、母は、フランス語がわからないので、その本はまったく読めないのだった〉
いくつかの作品を発表したあと、センベーヌさんはモスクワで映画の勉強をしたのだそうです。そして、映画作家としてデビューをはたします。日本でも、『エミタイ』が公開され、岩波ホールで上映されたことがありました。たしか、1984年だったと記憶しています。映画のほうはそれくらいしか知らないのですが、本のほうは、『神の森の木々』『消えた郵便為替』などがあります。セネガルが植民地時代のころのことを書いたものや、独立してからのことを書いたものもあります。
アフリカの現実にふれるのに、英語圏の作家とはちがったおもむきを感じたものです。
植民地の作家のもつ、つらさについては、わたしたち日本語を使う人間にとっても、決して他人事ではありません。「在日朝鮮人文学」をもつ、日本語文学は、植民地の問題を避けることはできないのです。