何はともあれ

『すばる』7月号の特集は「プロレタリア文学の逆襲」というものです。
本田由紀さんたちを呼んで、研究者の楜沢健さんとの鼎談と、諸家のエッセイです。文芸誌でこうした特集が組まれるなど、ずいぶん珍しいことで、それだけ現在の貧困の状況が無視できなくなっていることにつながっているのかもしれません。雨宮処凛さんもエッセイを寄せています。
文学作品である以上、どういう読まれ方をしても、それはその作品自身の問題なので、「こうでなければならない」という物言いはしてはいけないのだろうと思いますが、それでも、〈現代の貧困〉とあまりに結びつけすぎるのもどうかとも思います。ただ、楜沢さんが青空文庫のテキストの話をしていますが、こうした著作権が切れた人たちの文章がネットのテキストで読めることはやはり大切なものだと思います。そういう意味でも、70年延長に対しては、反対していかなくてはいけないのだと思います。ここ何年かで、前田河広一郎や中西伊之助久保栄に徳永直、中野鈴子に伊藤永之介というように、ぞくぞくと没後50年を迎える(前田河は今年が50年です)わけですから、今がある意味、勝負時かもしれません。