文明の伝承

小南一郎さんの『古代中国 天命と青銅器』(京都大学学術出版、2006年)です。
西周時代の青銅器の銘文(いわゆる金文ですね)を分析して、そこにあらわれた、「命」を上から下におろしていくシステムについて考えています。周の王が、天命をうけ、それを基盤にして諸侯に「王の命」を与えて、職務を保障するという段階がなりたっていたといいます。
そうしたヒエラルキーが社会的に認められる基盤として、青銅器の役割があるようなのですが、それとともに、文明の共通する記憶として、禹の治水伝説があるというのです。
最近注目の長江文明のエリアは別として、黄河流域には禹がこの地を定め(九州ですね)、それに相当する鼎をつくった(それが九鼎)ものが、天下安定の証明で、その鼎を保持するものが天下を支配するという認識があったというのです。
それと、考古学でいう先殷時代とがあわさったのが、夏王朝ということでしょうか。文献と遺物とをあわせた研究のおもしろさは、こうしたつながりの論証にあるのでしょう。