実用的

武内孝夫さんの『こんにゃくの中の日本史』(講談社現代新書、2006年)です。
こんにゃくという地味な作物が、19世紀からの関東地方の農村にどのような影響を与えていたのかを、現地調査もしながらあとづけた、おもしろいものです。
こんにゃくの実用化といえば、戦争中の「風船爆弾」が、こんにゃく糊をつかって、両国国技館を接収してせっせと製作されていたのですが、これには、陸軍登戸研究所による、精密な研究の成果が使われていたというのです。
偏西風にのって、アメリカ本土まで高度を下げずに飛行するために、必要な強度は、こんにゃく糊でなければ得られなかったというのです。海軍はゴムを使って気球をあげようとしたが、こんにゃくの強度には及ばなかったとか。
群馬県が戦後こんにゃく産地になったのも、そのときのこんにゃく増産の候補地としてあげられたことも一因だとか。
戦争の影響は、けっこういろいろなところに及んでいるものです。