上部構造

北條元一さんの『ハムレット論』(本の泉社)です。
1950年に刊行されたものの再刊なのですが、あわせて、遺稿となった、『ハムレットの現代に呼びかけるもの』と合本の形で刊行されました。
ハムレットは、当時の社会の矛盾を体現した人物で、それをのりこえることで、現在の民衆は社会変革をなしとげることができるのだという、北條さんの意見には、うなずけるところが多いと思います。
そうしてみると、社会の構造が変わっても、ハムレットのような、普遍的な悩みは存在するということで、文学の自律を言いたい人には役に立つことなのかもしれませんが、そこに、階級社会のもつ悲劇をとらえているところが、北條さんの論の大切なところなのでしょう。
前に、『蜻蛉日記』を読んだときに感じたのですが、嫉妬の感覚も、実は階級意識と関連しています。道綱母は、時姫には嫉妬していません。そこに、当時の感覚があるわけです。やはり、存在は意識を規定するのではないでしょうか。