砂上の楼閣

大げさなタイトルかもしれませんが。
雨宮処凛さんの『生きさせろ!』(太田出版)です。以前、雨宮さんの『群像』に載せていたエッセイについて簡単に触れたことがありましたが、この本では、そうした最近の雇用事情について、よく調査して書いてあります。
1995年に、経団連が、
「1割は管理する正社員・3割はスキルを生かす契約社員・残りは日雇いの派遣か請負の労働者」という働かせ方を方針として掲げて以来の雇用の液状化を追及しています。
それも大切なのですが、あとがきで雨宮さんはこう書いています。
「御飯を食べようと思っても『あのチェーン店は労働問題が……』『あそこの店は残業代不払い……』という言葉が頭をチラつき、買い物に行けば低賃金・長時間労働に晒されている従業員のことばかり気になってしまう。家に帰っても、テレビで電化製品のコマーシャルなんて見ようものなら、きらびやかな画面から『この商品は、偽装請負で働くフリーターの未来を奪い尽くして作られました』なんて脳内ナレーションまで聞こえてくる始末だ」
私たちの生活が、そうした犠牲の上にのっていることは、忘れてはいけないのでしょう。そうした人たちの気持ちがどこに向かうのか、それが問われているのですから。