生兵法

井上勝生さんの『幕末・維新』(岩波新書、2006年)です。
今までの思い込みの多かった近代史を、新しい研究成果にもとづいて書いたもので、それまでの「常識」とはちがった観点も多く見られます。
幕末の開国に関しても、最初は各大名も、公家もみんな条約やむなしという方向で固まっていたのに、孝明天皇だけが反発して、結局それが幕府の担当者の更迭につながり、さらには紀州派と一橋派との対立となり、あげくみかどの攘夷命令とそれを実施して逆に長州藩が被害をうけ、さらにはその結果、今まではけっこう日本にとって有利であった輸入品の関税が不利なものにさせられるという結果を招いてしまったというのです。周囲の意見もきかず突っ走るみかどの姿は、なにか靖国参拝を強行した小泉さんのことを思い出させてしまいました。
ほかにも読みどころは多い本です。