固定化

吉川徹さんの『学歴と格差・不平等』(東京大学出版会、2006年)です。
著者は、今の日本を考えるとき、学歴に注目すべきだというのです。というのは、今の日本は現在の教育制度が60年続いて、社会の状況をみていくのに役に立つ指標であると考えています。実際、高等教育を受けるかどうかで、日本人が半々に分かれるというのですから、それはけっこう大切な指標にはちがいありません。
著者の研究によると、親の学歴レベルを落とすまいという意識は子どもに受け止められるので、親が大学出だと子どもも大学進学をめざすが、親が高校以下の場合には、高校進学を果たした段階で、親のレベルと同程度になるので、これ以上の進学意欲がわかず、結果的に同じ高卒レベルが再生産される傾向にあるというのです。
この本は一般書というよりも研究書(3000円でおつりがきますから廉価です)に類するものという位置づけなので、それに対する評価は著者はくだしていません。
しかし、この方向性で日本の社会がすすみ、社会の半分の「大卒」型と「高卒」型との間の格差が、固定化していくことになるのなら、さてどうなるのだろうと考えてしまいます。
その点では、ある意味こわい本ですね。